【GW企画】ロスガリア大陸の神話 その2

●はじめに

こんにちは、アルパカコネクト運営です。
連休中に『AnnihEpica(アニエピカ)-幻創の箱庭-』を連日お届けする「GWはアニエピカ!」企画も4日目。本日は昨日に引き続き「ロスガリア大陸の神話 その2」をお届けします。

アストラル界の干渉や《クリーパー》侵攻により荒廃したマテリアル界はどうなってしまうのか……ハーフビーストやリザードマンの神話も語られる、今回の更新もお楽しみいただけましたら幸いです!

●ロスガリア大陸の神話 その2

・紀元前1100年?

混沌の時代が始まり幾星霜、なおも戦乱は吹き荒れる。
 数百の年月を経て双界による戦争は一つの転換期を迎えつつあった。
 不完全なるマテリアル界のエーテル環境の変質に曝され、戦い続けた《授恵者》たちは、『超大型級《クリーパー》』の討伐を成し遂げるまでになった。無論、世界の守護者たる竜たちに比べればその討伐数は微々たるものであったが、しかし超大型級を《授恵者》たちだけで討伐したのはこの頃が初めてであったと言われている。

 成長、成熟、あるいは――――進化。
 小さき神々はこれを喜び、そして同じだけ悔いた。
 導きを与えることで、愛し子らを苦難の道に堕としたのではないか、と。生きるために抗うのはよい。けれど進化に至る道を歩ませるのは酷ではないか、と。
 ただ。ただ、もしも進化の果てに同朋となれたなら――――。

 かような神々の悔恨と一片の希望はしかし、戦局には影響しない。もはや《クリーパー》との生存戦争は神々の手を離れ、竜と《授恵者》が主導する形になっていた。いや、初めから彼らの戦であったのだ。このマテリアル界に生きる彼らと、アストラル界よりやって来た《クリーパー》との……。
 小さき神々はこのことにようやく気付いた。

 そうして超大型級《クリーパー》の討伐が可能になった頃に頭角を現してきたのが『獣の魔女』と呼ばれる授恵者であった。
 現在の帝国領南東部を中心に遺されている幾つかの記録と口伝によれば、彼女は極めて優秀な《シューター》――精緻な射手にして多くの『パートナー』の統率者であったそうだ。
 いち早く敵の居場所を掴み、釣り出し、罠にかけて急所を射抜く。その能力は僅か九つの頃から突出しており、小型級《クリーパー》の群れであれば彼女とその猟犬たち――と言っても犬に限らず狼や獅子、兎、熊、馬、羊駱駝(アルパカ)など多岐に渡っていたが――の一党だけで殲滅できるほどであったという。そして超大型級の討伐となれば逆に猟犬らを牽制に使って自らの弓による致命の一矢を狙うという、二つの戦法を巧みに操る狩人であった。

 獣の魔女の有名な戦いの一つに『獅子山羊の大魔との決闘』がある。これは四つの村を一夜にして喰らい尽くした《クリーパー》である獅子山羊を彼女ら一党が討伐する話だ。

 村が消えた噂を聞きつけた魔女は他の《授恵者》が集まる前に現地へ行くと単独で潜伏、集合した《授恵者》らがいざ探索に乗り出さんとしたところに急襲してきた獅子山羊を、逆に奇襲したのだという。
 散り散りに散開する《授恵者》をよそに獣の魔女一党は敵が立て直す暇を与えることなく攻め抜き、最後には『魔女の十矢』によって心の臓を貫いて討伐した。囮にされた形の《授恵者》らは抗議したが魔女は歯牙にもかけず、討伐した獅子山羊の肉を切り分け「お裾分け」と言って帰ったという逸話である。

 それだけでも独立不羈の性質があると分かるが、もう一つ彼女には嘘か真かも知れぬ伝承が遺されている。

 それは新たなる人間――『ハーフビースト』の母である、という伝説である。
 獣の魔女はその名が示す通り、多くの朋友を従えていた。人嫌いだった、動物が好きすぎた、あるいは勝手に動物が服従したのだとも言われているが、何にしろ彼女は多くの動物と共に生き、多くの動物を救った。
 そうして朋友と共に戦い抜いた彼女は己が霊智に動物の新たな可能性を願い、小さき神々の一柱はその功績に応えた。
 それこそが現在もハーフビーストの一部に伝わる『月の女獣』と『人と地の神』の神話であった。

 神話が真実であるか否か、それは分からない。されども前1100年頃獣の魔女なる《授恵者》が活躍したことと、同時期にハーフビーストが生まれたことは確かであろうと考えられている。

・紀元前1000年?

 ハーフビーストという新たなる人間の誕生。それはマテリアル界に大きな波紋を起こした。小さき神々は驚愕と不安を覚えながらも概ね祝福した。エーテルによって知性を得た幾ばくかの動植物は狂喜した。人間は新戦力に期待する者と新入りを軽んじる者に分かれた。
 そして、世界の守護者たる竜たちは静観した。――少なくとも、表面上は。

 かような状勢であったが《クリーパー》は依然として猛威を振るう。
 それも当然ではあったのだ。絶壁の境界が破壊されたままなのだから、いくら討伐しようと《クリーパー》はマテリアル界を跳梁跋扈する。誰もが理解しており、されど誰もが境界の修復に手を付けられない。

 創造神は永き眠りから御目覚めにならなかった。一説には夢幻の領域にてまた新たな世界を創っているのだとも、それほどの御力をこのマテリアル界に注いでくださったが故にお休みになられているのだとも言われている。
 あるいは彼自身は今あるものをそのままに修復することができないため他の手段を探されているのだとも。いずれにしろ彼が境界を修復することはなかった。

 小さき神々は権能の用い方に迷いを覚えた。己が権能をいかにすれば境界修復なる形に収められるか。下手に干渉すれば愛おしいこの世を自らの手で台無しにする可能性があった。無論、竜や人間には純粋にエーテルに干渉する力と術が足りなかった。
 またアストラル界に直に接している境界は混沌が渦巻き、エーテル環境的にマテリアル界で最も乱れた空間であったことも対処できなかった要因であろう。

 結果として、各々に各々の障害が立ちはだかり、《クリーパー》の討伐という対症療法にのみ従事していたマテリアル界であったが、その間隙を縫って新たに自ら立ち上がったのが彼ら――のちに『リザードマン』と呼ばれることになる者たちであった。

 この頃にはマテリアル界各地に生まれてしまった苛酷な環境に合わせて戦場を分担する向きが竜と《授恵者》らの中にはあった。
 大地覆い人魔喰らう大森林ではエルフや蜂が、憤怒もて焔噴く大火山ではドワーフや焔陸亀が、命尽く皆乾かしの大砂漠では竜も《授恵者》も誰もが協力した。

 そのうちの一つ、呪魂絡め土葬する大湿地とその周辺を主戦場としたのが、蜥蜴たちと竜――特に『天に溶けし征竜』と呼ばれる個体であった。
 あらゆるものを絡めとると言われる大湿原に適性があった彼らは、泥濘に潜む巨顎蟹を掘り返し、水中から虎視眈々と獲物を狙う儒艮を正面から叩き潰す。天に干渉する竜のブレスは葦原を吹き飛ばし、蜥蜴らはぬかるんだ大地を勇猛果敢に踏破する。彼らは密に連携することで苛酷な環境を克服していた。
 それ故に、蜥蜴らが天に溶けし征竜を畏れ敬うようになるのも、竜が蜥蜴に愛着を持つようになるのも、畢竟必然のことであった。

 ハーフビーストなる新人類が誕生したことを知った蜥蜴らは、汚泥啜る闘争の果てに竜に願った。

 ――我らもと。我らも新たな力を得て、何処までも征竜様と共に征きたい、と。

 これを聞いた多くの竜は危惧した。たかだか百余年で二種もの新たな人間が誕生してしまうのはマテリアル界のエーテルを変質させることに他ならぬのではないかと。天に溶けし征竜はしかし、この願いを聞き届けた。
 かの征竜は言った。これも我らの父の御心にかなうことだと思うよ、と。
 それを受け入れられなんだ竜との闘争は一冬続いたと蜥蜴らの一部に遺される口伝にはある。

 征竜なき戦場で一つの季節を戦い抜いた蜥蜴らは、ある晩、天に瞬く光を見た。夜天の光はそれを仰いだ蜥蜴らのもとに降り注ぎ、彼らを新生なさしめた。願いが叶ったことを悟った彼らが滂沱の涙を流して地に伏した時、畏敬する征竜の声を聴いた。

 共に征こう、リザードマンよ。真の同胞と成る日を楽しみにしている。
 その日、蜥蜴ならぬリザードマン魂の求道者となった。

執筆:京乃ゆらさ
監修:アルパカコネクト

●おわりに

本日は「ロスガリア大陸の神話 その2」をお伝えしました。ハーフビーストとリザードマンが生まれ、プレイヤーキャラクターとして選択できる種族も出揃ってきたようです。

明日は「ロスガリア大陸の神話 その3」をお届け予定! 《クリーパー》との戦いの行方、そして現代へと続く歴史時代の幕開けが語られます。ぜひお楽しみに!

GWはアニエピカ! 情報公開予定


それでは、またの機会に!

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